気になったデータをグラフや図にして
「へー」ってなるページ

日本人の死亡原因

豆知識

血管性認知症

脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血などのような、脳の血管が詰まることや出血が生じる病気によって発症する認知症のこと。脳の場所や障害の程度によって症状が異なるため、できることとできないことが比較的ハッキリと分かれていることが多い。手足の麻痺などの神経症状が起きることもある。

腎不全

 腎炎などの病気で腎臓の機能が低下し、老廃物を十分排泄できなくなる状態。腎臓の働きが正常の30%以下に低下した状態を腎不全という。いったん慢性腎不全になると、腎機能は回復不可能となる。腎不全が進行すると、尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)、リン(P)、カリウム(K)等の尿毒症性物質が体内に溜まり、疲労や息切れ、尿量の減少、浮腫、錯乱、呼吸困難などが起き、このまま放置すると死に至る。

誤嚥性肺炎

 嚥下機能障害により、唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症する。

心疾患(高血圧性を除く)

 心疾患とは心臓に起こる病気の総称で、その多くが虚血性心疾患である。虚血性心疾患とは、動脈硬化などによって心臓の筋肉(心筋)へ血液を送る冠動脈の血流が悪くなった結果、心筋が酸素不足になる病気のことで、狭心症と心筋梗塞の2つがある。

脳血管疾患

 脳の動脈に何らかの障害が発生し、それによって脳の機能が失われて全身に影響を与える状態を脳血管疾患(脳卒中)と呼ぶ。脳血管疾患は脳の血管が詰まるタイプ(脳梗塞)と、脳の血管が破れるタイプ(脳出血・くも膜下出血)に大きく分けることができる。

不慮の事故

 転倒転落・溺死・窒息・火災・中毒などのこと。

日本人の死亡原因の割合

日本人の死亡原因の割合

 2021年の死亡者数の総計は143万9809人。そのうち26.50%が悪性新生物、14.91%が心疾患、10.56%が老衰でした。これってつまり老衰で死ねる人って1割しかいないということですかね…?老衰まで生きられた人ってそんなに少ないとは思っていませんでした。

 ちなみにコロナの死者は1万6756人だったので、全死者数の1.16%。これは多いのか少ないのか。

日本人の主な死亡原因の推移

 老衰が思ってたより少ないとは言いつつも、ここ20年で随分と増えていっているようです。2000年時点では10万人中17人程度だったのが、2020年には100人を超えています。ところで昔は老衰の人が多かったってこれ本当なんですかね?

 戦後驚くほど死者数が減少している結核や肺炎。それに対して逆に増えてしまっている悪性新生物や心疾患。

 昔は結核や肺炎などのように若い人でも亡くなる病気がたくさんあったけど今はそうではなくなり、その結果年寄りが増えて今度は年寄りが患いやすい悪性新生物や心疾患で亡くなる人が増えている。そんな感じなんじゃないかなぁと妄想してます。

◆◆◆

 1918年~1920年に肺炎が爆発的に増えているのは、インフルエンザのパンデミックによるものです。いわゆる「スペイン風邪」と呼ばれている奴ですね。「スペインインフル」とも呼ばれているそうです。当時の世界人口の3分の1が感染し、4000万人~5000万人が亡くなったとされています。日本国内でも2300万人が感染し、38万人が亡くなったと言われています。当時の日本の人口は5500万人程度だったらしいので、日本人の4割ほどが感染したということになります。

 ちなみに、スペイン発祥というわけではなく、初期にスペインから感染拡大の情報がもたらされたため、スペイン風邪と呼ばれているんだとか。

◆◆◆

 「不慮の事故」のグラフには分かりやすく災害の影響が出ています。1923年のピークは関東大震災で、死者数は10万5385人。1995年のピークは阪神・淡路大震災で死者6434名、行方不明者3名。2011年のピークは東日本大震災で死者1万9747名、行方不明者2556名でした。

◆◆◆

 1994年から1995年にかけて心疾患が大きく減少しているのは、日本の人口動態統計にICD-10を導入し、それに伴って死亡診断書が改正されたからだそうです。

 ICDとは、"International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems" の略で、日本語では「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」。WHOが制定している分類で、およそ10年に1度修正されている。日本では1995年(平成7年)1月からICDの第10回修正であるICD-10が導入され、それに伴って死亡診断書に「死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全等は書かないでください」という注意書きが加えられたとのこと。これが施行前から周知されていたため、1994年から影響が出たと思われるそうです。

 他にも、脳血管疾患による死亡数の増加と肺炎による死亡数の減少もICD-10導入の影響で大きく変化しただけで、死亡傾向が大きく変化したわけではないとのこと。

 ちなみに2022年現在は、ICD-10(2013年版)に準拠しています。また、2018年(平成30年)6月にWHOがICD-11を公表し、2022年2月に発効されたそうなので、あと数年で日本もICD-11に切り替わる予定なんだとか。30年ぶりの大改訂らしいですよ?色々病名も変わるため、専門家以外の人たちにもちょくちょく影響があるそうです。

年齢別死亡原因の割合

年齢別死亡原因の割合

年齢別死亡原因の割合

 人口動態統計より、年齢別死亡原因の割合です。10代から40代までは自殺と悪性新生物が多くを占めており、50代から80代までは悪性新生物と心疾患、それ以降は老衰と心疾患の割合が増えていってます。10代後半から20代までの死因のうちおよそ半数、30代の3分の1が自殺です。

 0~4歳のほとんどが「その他」なのは、先天奇形、変形及び染色体異常・周産期に特異的な呼吸障害等・乳幼児突然死症候群などが多くを占めているからです。

 ところで、60代前半で老衰ってあるんですね。60-64歳で35人、65-69歳で182人が老衰で亡くなったそうです。

 余談ですが、よくネットなんかでは、最近の若者は自殺が多くて~ということを言っている人を見かけますが、昔から、少なくとも戦後からずっと若者の死因上位に居座っています。

年齢別死亡者数

年齢別死亡者数

 縦軸を変えるとこんな感じ。このグラフと上のグラフは縦軸をちょっと変えただけで全く同じデータを使ってます。上のグラフを見てみると最近よく耳にする若者の自殺率の高さが目立たなくなってしまうので、こっちのグラフは都合の悪い人が多そうだなぁなんて邪推してます。

 まぁ、若者のこと考えてますアピールはウケが良いですからね。別に絶対数が少ないから後回しにしろと言ってるわけじゃないです。ただ、なんだかなぁと思ったり思わなかったり。

◆◆◆

 男と女を見比べると、女の人の方が老衰がだいぶ多いです。老衰は男が4万1000人だったのに対し女は11万1000人という悲しい現実です。

日本の自殺者数

 何かと話題になる自殺者数について見ていきます。

2020年(令和2年)年齢別自殺者数

 令和3年度自殺白書より、男女別年齢別に見るとこんな感じ。どの年代も男の方がかなり多いですね。総数は2万1081人、そのうち男は1万4055人、女は7026人で男がおよそ3分の2を占めています。

 若年層ばかりが取り沙汰されますが、絶対数を見ると中高年の方が深刻なんですよね。特に多いのは40代の男で2466人、次いで50代男で2371人、70代男が1912人でした。女性で一番多かったのは70代で1114人でした。ちなみに年齢不詳が54人いたそうです。

男女別自殺者数の推移

 厚生労働省「人口動態統計」より、男女別の自殺者数と10万人当たりの自殺者数の推移です。最も多かったのは男性が2003年で2万3396人(10万人当たり38人)、女性の方は1958年で9746人(10万人当たり20.8人)でした。ここ10年ほどは全体的には減少傾向にあるようです。

 全体を眺めてみると大きく3つの山が見えるわけですが、1950年代後半の増加の原因として、戦後の社会の混乱が残っていた時期であったことが挙げられています。この時期は男女ともに特に若者の自殺者数が多く、戦前の価値観からの急激な変化による悩みや、青年期に受けた戦時体験が強く影響しているのではないかと言われている。

 2つ目の1980年代の上昇は中高年男性が特に増加していて、これはプラザ合意後に起きた円高の影響で輸出が減少した結果、国内が不況になってしまったことが原因であると言われている。

 3つ目の1998年以降の急増も特に男性で起きています。この時期は男性のほとんどの年齢で大きく増加し、それから10年ほどずっと高いままでした。これはバブル崩壊による影響とする説が有力らしいですが、その後しばらく自殺者数が減少しなかった理由は良く分かっていないんだそうです。

年齢別日本人男性の自殺者数の推移

年齢別日本人男性の自殺者数の推移

 男性と女性を見比べてみるとこんな感じ。女性の方は戦後若者間で急増した以外には特に大きな増加はありません。

年齢別10万人当たりの自殺者数の推移

 こちらは警察庁「自殺統計」からなので少し数字が違います。年齢別10万人当たりの推移です。全体的に似たような割合になってきてるのは何なんでしょうね?

 ここ10年は全体的に減少傾向でいい感じだったのですが、2021年に上昇してしまっているのがちょっと怖いですね。コロナのせいで人との接触機会が減り、それが長期化することで女性や若者の自殺が増加する、という問題はすでに確認されているそうですが、きっとそれだけじゃないんでしょうね。

動機別自殺者数

 これは2020年の動機別自殺者数です。実は半数近くが健康問題が原因で、そのほとんどが鬱病や統合失調症などの精神病です。次いで多いのが経済・生活問題。生活苦や多重政務などが多いです。あとは夫婦や親子関係の不和といった家庭問題や、職場の人間関係や仕事疲れといった勤務問題、孤独感、男女問題、学校問題などが挙げられます。

まとめ

  • 老衰で死ねる人は1割
  • 戦後まで肺炎や結核が猛威を振るっていた
  • 20代の死亡原因の半数近くが自殺
  • 自殺者の3分の2が男
  • 自殺者の半数近くが健康問題が原因
  • ここ10年ほどは自殺者数が右肩下がりだったが、2021年は少し増えた
  • 60代で死亡する人の半分近くが悪性新生物で亡くなっている
  • 2021年の死亡原因ワースト3は、1位:悪性新生物 2位:心疾患 3位:老衰

参考

  • 令和3年度人口動態調査
  • 令和3年度自殺白書
ツール集